ご挨拶

私は、たくさんの「童子」を創っています。
彼らはたんなる子どもではなくて、異界からやってくる神秘性を秘めた童子です。ですから、ただかわいいだけではありません。
あたまには、知恵の象徴であるちいさな角を生やしています。小さい時は一本ですが、すこしおおきくなると、ちょうど乳歯が永久歯に生え変わるように二本の角が生えてきます。
私のいう「童子」は、科学者が「エネルギー」と呼んでいるものとたぶん同じものだと思っています。
「童子」は自然界のいろんなところで働いています。
雲のうえで雨や風や雷を司っている風神や雷神の子どもたちは「追い風童子」や「火伏せ童子」と呼ばれています。そして、ときどき我々のそばにやってきていたずらをしたり、人助けもしてくれます。
この世のすべての現象のうしろにはかならず「童子」が働いています。一粒の種から芽が出て葉が繁り、花が咲き実ができるのも、彼らのしわざです。私の造る童子の仲間は全国に散らばっています。
そして彼らの姿に、無意識の記憶を刺激され、忘れていた情景を思い出す人達がたくさんいます。じつは私自身もそうなのです。
このたび彼らの姿がさまざまな小動物たちとともに「牛銀番茶亭」でも見られることになりました。その姿にみなさん一人一人が何を思うのか、作者である私はとても楽しみにしています。
籔内佐斗司(彫刻家)

略歴

1953年生まれ
東京芸術大学美術学部彫刻学科卒業
同大学院美術研究科修了
1981年、松阪青年会議所主催の「松阪彫刻シンポジウム」に参加し、
「牛銀本店」の小林正典氏と出会う。
1982年より同大学院美術研究科助手として、薬師寺地蔵菩薩立像(奈良市)、
平林寺十六羅漢像(新座市)等の保存修復事業に参加。
1987年より東京都台東区に仕事場を構え、東京、大阪、名古屋、神戸、
ニューヨーク等で個展を開き、好評を博している。
仏教的世界観や東洋的自然観を暖かく懐かしい造形で表現、滑稽さと諧謔に満ちた奇想天外な作品世界は観る物を魅了してやまない。